
2025年度(YA 2025)法人所得税リベート
概要
すべての適格企業は、SGD 2,000の現金助成金を受け取ることが可能
また、すべての納税企業は、納税額の50%の法人所得税(CIT)
リベートを受けることが可能
- 50%のリベートは、最大SGD 40,000まで適用
- ただし、SGD 2,000の現金助成金を受け取った(または受け取る資格がある)企業は、リベートの上限がSGD 38,000に制限
- SGD 2,000の現金助成金を受けるための条件:
- 2024年中(1月~12月)に事業を継続的に行っていること
("企業が活動している" ことが要件として新たに追加) - 2024年中に少なくとも1名のローカル従業員を雇用していること
- 2024年中(1月~12月)に事業を継続的に行っていること
重要なポイント
- コスト負担の軽減策として、2024年度(YA 2024)に実施されたリベートと助成金が2025年度(YA 2025)まで延長
- 一方で、新たに「企業が活動していること」という点ががリベート適用のための要件として追加
- SGD 2,000の助成金は、2025年の第2四半期(4月~6月)から自動的に支給
- ローカル従業員の要件は、企業が1名以上のローカル従業員に対してCPF拠出を行っていることにより充足
- 課税企業と赤字企業の間に不均衡が生じる可能性があり、特に赤字企業にとってはさらなる支援が必要となる可能性
所得税法(ITA)第13W条 – 企業の資産売却益の非課税措置
第13W条の時限措置が撤廃され、対象範囲が拡大
これにより、優先株式の売却も非課税の対象に含まれるようになったほか、
会計上のグループ単位での判断が可能
変更点(2026年1月1日以降適用)
- 長年の不確実性が解消され、優遇措置が継続
- 適用範囲が拡大し、売却時に会計基準上「資本」として計上される優先株式も非課税対象
- 最低保有割合の要件について、グループ単位での判定が可能に
- つまり、関連会社の持分も合算して最低保有割合の要件を満たしているか判断できる
重要なポイント
- 優先株式が会計上「負債」として扱われる可能性がある点に注意
- 今回の適用範囲の拡大は「資本」扱いの優先株式が対象であり、
「負債」扱いのものは対象外。 - そのため、売却した優先株が負債とみなされる場合は、
利益に課税される可能性。
- 今回の適用範囲の拡大は「資本」扱いの優先株式が対象であり、
- シンガポール企業で、一定の経済的実体要件を満たさない場合、
第10L条により課税対象となる可能性- 経済的実体要件を満たしているかを確認することが重要
(Japan Desk 注:SFRS上、金融負債の定義に照らし、発行側に償還義務のある優先株式等は、負債として会計処理を行う場合があります)
従業員株式報酬制度(EEBR)における税控除
持株会社または特別目的会社(SPV)が発行する新株を従業員に付与する場合、
企業は支払いに対する税控除を受けることが可能に
変更点(2026年度(YA 2026)以降適用)
企業は、持株会社またはSPVに対する支払いについて、以下の低い方の金額を基準に税控除を受けることが可能に
- 企業が支払った金額
- 付与時点の公正市場価格(または純資産価値)から、
従業員が支払った金額を差し引いた額
重要なポイント
- 企業側と従業員側の株式付与・ストックオプションの税務上の‘取り扱いの整合性が強化されたものの、いまだ非対称性な部分は残
- 税控除を受けるためには、あらかじめ持株会社またはSPVを設立する必要別法人への支払いが発生しなければ、控除は適用されない点に留意
- 従業員株式報酬制度(EEBR)における「自己株式(Treasury Shares)」
と「新株」の税控除ルールの違いに注意が必要
シンガポール証券取引所(SGX)に上場されているREIT(不動産投資信託)に対する所得税優遇措置
既存の税制優遇措置の適用期限を 2030年12月31日まで延長されるとともに、税務透明性(Tax Transparency)措置の適用対象が拡大し、2025年7月1日以降に発生する全てのコロケーション(共用施設)およびコワーキングスペースの収益が含まれることになった。
2025年2月19日以降の変更点:
- 適格外国源泉所得の範囲が拡大し、新たにシンガポールで受け取った賃貸収益および関連収益が含まれる(一定要件あり)
- SGX上場REIT(S-REIT)の完全子会社が、シンガポール法人であるとする要件の撤廃
- ただし、当該子会社はシンガポール税務居住者であることが優遇措置の適用条件
- 完全所有のシンガポールのサブトラストやシンガポール税務居住法人は
- 株主ローンの返済や資本還元を、S-REITに所得を流通させる手段として認識可能に
- その他の運営費用を控除してから、残額をS-REITに移転することが可能に
シンガポール証券取引所(SGX)上場REIT ETF(不動産投資信託上場投資信託)に対する所得税優遇措置
- シンガポール証券取引所(SGX)上場REIT ETF(S-REIT ETF)の分配金に対する税務透明性のための時限措置の撤廃
- SGX上場REIT ETF(S-REIT ETF)の分配金に対する優遇源泉徴収税(WHT)率10%の適用期間の延長
変更点
- 税務透明性措置の時限が撤廃され、S-REIT ETFの信託受託者が受け取る分配金の税務透明性が維持。
- SGX上場REIT ETF(S-REIT ETF)の分配金に対する優遇源泉徴収税(WHT)率10%が2030年12月31日まで延長
- 適格な非居住法人投資家が受け取る分配金に適用
重要なポイント
- 既存の税制優遇措置およびサンセット条項の延長により、S-REIT市場の継続的な成長を支援し、シンガポールのREITハブとしての地位を維持
- シンガポール金融管理局(MAS)は2025年第2四半期(Q2)までにさらなる詳細を公表予定
イノベーション活動に関する認可コストシェアリング契約(CSA)の支払いに対する税控除
2025年2月19日以降、イノベーション活動に関するコストシェアリング契約(CSA)に基づく支払いに対し、100%の税控除が適用
変更点(2025年2月19日以降適用)
- イノベーション活動に関するコストシェアリング契約(CSA)に基づく支払に対し、100%の税控除が適用
- 所得税法(ITA)上の「研究開発(R&D)」の定義を満たさない活動も対象となる
重要なポイント
- 企業がリソースを共有しながらイノベーション活動を推進しやすくするために導入された制度
- シンガポール経済開発庁(EDB)が制度を管理し、2025年第2四半期(Q2)までに詳細を発表予定
土地集約化控除(LIA)制度
- 土地集約化控除(LIA)制度の適用期限が2030年12月31日まで延長
- 建物利用者が「関連企業」とみなされるための持株要件が、従来の「75%以上」から「50%超」に引き下げ
この変更は、2026年1月1日以降に申請されるLIAに適用
適格要件
- 適格建物の総床面積(Gross Floor Area)の少なくとも80%が、認可を受けた企業またはその関連利用者によって使用される必要
- 「関連企業」とみなされるためには、直接または間接的に50%超の株式を共通して保有していることが要件
- 従来の要件では、少なくとも75%の株式を共通して保有(または、パートナーシップの場合は75%以上の所得権利を有する)ことが必要であったことからの要件緩和
重要なポイント
- 持株要件の引き下げにより、LIAインセンティブの適用対象となる企業が増える可能性
- 建設管理庁(BCA)およびシンガポール経済開発庁(EDB)は、2025年第3四半期(Q3)までに詳細を発表予定
- パートナーシップの所得配分に対しても50%超の基準が適用されるかは明確ではないが、公平性の観点から適用されるべきと考えられる
プロジェクトおよびインフラファイナンスに対する税制優遇措置
適格プロジェクト債(QPDS)に対する税制優遇措置は、2025年12月31日をもって終了
適格な海外インフラプロジェクトに対する税制優遇措置は、2030年12月31日まで延長
影響
- 既存のプロジェクト債投資家は、証券の存続期間中は引き続きQPDSの税制優遇措置を享受可能。2025年12月31日以降に発行される新規債券は、「適格債券(QDS)」制度の適用を受けることが可能
- 海外インフラプロジェクトへの投資およびファイナンスを行う認可上場企業向けの税制優遇措置は、2030年12月31日まで延長
重要なポイント
税制優遇措置の合理化により、一般投資家向けのインセンティブが整理された一方、シンガポールを拠点とするインフラプロジェクトのスポンサーが、シンガポールの金融システムを活用して海外インフラプロジェクトに投資しやすい環境が維持される
保険事業開発(IBD)制度
IBD制度の適用期限が2030年12月31日まで延長されるとともに、2025年2月19日より、新たに15%の優遇税率(CTR)ティアが導入
変更点
- IBD制度は、2025年12月31日で終了予定だったが、適用期限が延長
- 2025年2月19日以降、IBD、IBD-キャプティブ保険、IBD-保険仲介事業スキームに対し、新たに15%の優遇税率(CTR)ティアが導入
- シンガポール金融管理局(MAS)が2025年第2四半期(Q2)までに詳細を発表予定
重要なポイント
- シンガポールをアジアの保険・再保険センターとして強化し、競争力を高めるための政府の戦略的施策の導入
- 15%の税率ティアは、他の優遇税率ティアに比べ、企業に課される経済的要件が低くなる可能性
- 既存のインセンティブ受領企業が、初期の経済要件を満たせなかった場合、新たな15%のCTRに移行(ダウングレード)する可能性
- 基本法人税率(17%)との差が小さいため、監査・報告要件の負担を考慮すると、15%の税率ティアはそれほど魅力的でない可能性も考えられる
- MASが追加のCTRティアの適格条件に関する詳細を今後発表予定
金融セクターインセンティブ(FSI)制度における15%の追加優遇税率ティアの導入
2025年2月19日より、新たに15%の優遇税率(CTR)ティアが導入される
変更点
- 金融セクターインセンティブ(FSI)制度の認可を受けた企業は、適格所得に対して10%、13.5%、または新設の15%の税率を適用可能
- 対象スキーム:
- FSI-スタンダードティア(FSI-Standard Tier)
- FSI-トラスティー会社(FSI-Trustee Company)
- FSI-本社サービススキーム(FSI Headquarter Services Scheme)
- 対象スキーム:
- シンガポール金融管理局(MAS)が2025年第2四半期(Q2)までに詳細を発表予定
重要なポイント
- FSI制度は、シンガポールにおける高成長・高付加価値の金融活動を奨励する目的で導入され、競争力を維持するために継続的に改良されている
- 基本法人税率(17%)と15%の税率差が小さいため、企業の行動に大きな影響を与える可能性は低いと考えられる
Equities Market Review Groupが推奨する税制優遇措置
シンガポールで新規上場する企業、新規ファンドマネージャー上場、およびシンガポール上場株式に大規模投資するファンドマネージャー向けの新たな税制優遇措置が導入
変更点
- 適格要件を満たす場合、シンガポールに上場した企業および登録事業信託は、上場後5年間の年間法人税リベートを申請可能
- 時価総額がSGD 10億を超える場合:年間最大SGD 600万
- その他のケース:年間最大SGD 300万
- 金融セクターインセンティブ – ファンドマネジメント(FSI-FM)の強化(適格要件あり):
- シンガポールに上場するファンドマネージャー(またはその持株会社)は適格所得に対し5%の優遇税率を適用可能
- シンガポール上場株式に大規模投資するファンドマネージャーの適格所得に対し、税免除
重要なポイント
- 企業のシンガポール証券取引所(SGX)への上場およびシンガポール上場企業への投資促進を目的とした措置
- 一般的な優遇措置は、上場企業がシンガポールで実質的な営業収益を持つ場合に有効だが、法人税リベートが事業子会社に「譲渡」できる場合はさらに有益となる可能性
- 新たな税制優遇措置を検討するファンドマネージャーは、既存のFSI-FMインセンティブと同等またはそれ以上の適格要件を満たす必要がある可能性が高い
- 税免除のための投資要件が、ファンドマネージャーにとってインセンティブを活用する上での障壁となる可能性あり
認可船舶ファイナンス契約(ASFA)アワード(船舶およびコンテナ向け)
シンガポールを拠点とした船舶および海上コンテナの所有・管理を支援するため、認可船舶ファイナンス契約(ASFA)アワードが導入
- 認可された企業が、非居住者貸し手(非課税対象)からの融資に基づいて
- 船舶・コンテナの購入や建造資金を調達する場合、2025年2月19日から2031年12月31日までの適格契約について、利息および関連支払いの源泉徴収税(WHT)が免除
- ASFAアワードの受領者が、非居住者の貸し手(ただし、シンガポールに恒久的施設(PE)を持たない者)に対して、ファイナンスリース(FL)契約に基づき支払う船舶・コンテナリース料もWHTが免除される
- 本制度は2025年2月19日から適用開始
- シンガポール海事港湾庁(MPA)が制度を管理し、2025年第2四半期(Q2)までに詳細を発表予定
海事セクターインセンティブ(MSI)制度
MSI制度の適用期限が2031年12月31日まで延長
変更点
- 適格なファイナンス契約に基づく支払いに対する源泉徴収税(WHT)免除の適用期限が、2031年12月31日まで延長
- 2025年2月19日以降の追加改訂:
- MSI-SRS(シンガポール船籍登録制度)、MSI-AIS(国際船舶事業認定制度)、MSI-SSS(海事関連支援サービス制度)における「認定船舶管理サービス」の範囲を拡大し、排出管理サービス(Emission Management Services)を追加
- MSI-SRSおよびMSI-AISにおける「洋上再生可能エネルギー活動」の範囲を拡大し、陸上で発電された再生可能エネルギーの海底配電を対象に追加
- MSI-海事リース(船舶)アワードの対象船舶を拡大し、陸上で発電された再生可能エネルギーの海底配電を支援する船舶を追加
- ファイナンスリース(FL)契約に基づき第三者からリースした資産で、売買契約として扱われるものを、MSI-海事リース(船舶)およびMSI-海事リース(コンテナ)アワードの適格資産として認定
- MSI-SSS(海事関連支援サービス制度)における支援サービスの範囲を拡大し、「海事技術サービス(Maritime Technology Services)」を追加
電動大型貨物車両(HGV)およびバスに対する追加固定税(AFC)の導入
2026年1月1日以降に登録される電動大型貨物車両(HGV)およびバスに対し、追加固定税(AFC)が適用
変更点
- 2026年1月1日以降に登録される電動大型貨物車両(HGV)およびバスに対し、追加固定税(AFC)が適用
- 2025年12月31日までに登録された電動HGVおよびバスについては、2029年1月1日までAFCが免除
重要なポイント
電動HGVへの移行を検討している企業は、2026年1月1日までに登録することで、2029年1月1日までAFCの免除を受けることが可能
既存の優遇制度の延長
- 国際化のための二重税控除(DTDi)制度の適用期限が、2025年12月31日から2030年12月31日まで延長
- 合併・買収(M&A)制度の適用期限が、2025年12月31日から2030年12月31日まで延長
- インフラ事業、船舶リース、および航空機リース分野におけるS-REITおよび登録事業信託(RBT)に対し、特定の経費に関する仕入GST(消費税)の控除を認めるGST還付措置は、当初2025年12月31日で終了予定だったが、2030年12月31日まで延長
- 適格なコンテナを使用して海上輸送を行うための、オペレーティングリース契約に基づく非居住者貸し手へのコンテナリース料の源泉徴収税(WHT)免除期限の延長。この免除措置は2027年12月31日に終了予定あったが、2031年12月31日までに締結された契約に対して期限延長
- MSI認定企業におけるファイナンスリース(FL)契約に基づき、非居住者貸し手(ただし、シンガポールに恒久的施設(PE)を有する者を除く)へ支払われる船舶およびコンテナリース料は、源泉徴収税(WHT)が免除される制度につき、2028年12月31日に終了予定だったものを、2031年12月31日までに締結された契約に対して期限延長
廃止予定の優遇制度
- ベンチャーキャピタルファンドおよびベンチャーキャピタルファンドマネジメントに対する税制優遇措置は、2025年12月31日をもって終了
- シンガポールで業務を行う非居住者の仲裁人および調停人に対する10%の優遇源泉徴収税(WHT)措置は、2027年12月31日をもって終了
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